退職を切り出せずに悩む必要はありません

 

今このブログをお読みの皆さんは、きっと新しい、前途ある仕事への転職が成功したばかりなのでしょう。まずは、おめでとうございます!転職先では、現在の仕事よりも充実した福利厚生制度があり、皆さんの仕事の責任も拡大することでしょう。皆さんが長い間重ねてきた努力が報われたのです。しかし、どこか気持ちがスッキリしないとしたら、それはなぜでしょうか。

それはおそらく、辞表の提出という、足が竦むような仕事がこれから控えているからです。上司にどのように切り出せばいいだろう?自分勝手だと思われたらどうしよう?後戻り出来なくなるのでは?辞表の提出期限が迫るにつれて、心の中にはさまざまな不安が浮かんで来ます。しかし心配はいりません。皆さんは、ぜひ新しいチャンスを掴んで下さい。今回のブログでは、皆さんが安心して良い理由をそれぞれの不安に合わせて説明していきます。

不安その1 どのように伝える?

オファーレターを受け取り、リクルーターに内定を承諾する意思を伝え、転職先との雇用契約を締結したら、上司と面接する日を決めましょう。辞表は、その日に提出すれば良いでしょう。この面接日は、転職確定後に早めに設定し、不安を引きずらないようにすることが大切です。スケジューリングを進めながら、次の点に備えましょう。

不安その2 辞表はどのように書けばよい?

以下のポイントを参考に、退職が前向きなことであることを伝えて下さい。

  • 上司に退職の意思を伝えて下さい。あなたが心から退職を悲しんでいる場合でも、それを過剰に表現する必要はありません。「心残りはありますが、転職することに決めました」位の感度がちょうどよいのではないでしょうか。
  • 最終出勤日を確認しましょう。
  • 後任者への引継ぎ、トレーニングは積極的に手伝うと申し出ましょう。
  • 最後に、在職中の感謝などを伝えましょう。例えば、「在職中は、大変お世話になりました。この会社で教えていただいたことに心から感謝しています。チームの皆さんの今後の活躍をお祈りしています」などの挨拶が適切です。

退職の理由は、必ずしも詳しく説明することありません。それについては、次のポイントで解説します。

不安その3 上司とのミーティングでは何を話すべき?

気負いすぎには注意しましょう。ミーティングが気まずい空気になってしまいます。上司は、過去にも同様の経験をしているプロフェッショナルです。この面接を気づまりに感じることはないでしょう。

転職先や転職の理由について質問されるかもしれませんが、その場合は、「良い条件を提示されたので断ることが出来なかった」など前向きな視点で決めたことを伝えて下さい。反対に、「今の職場で働きたくない」など、後ろ向きな理由は控えましょう。ただし、自分の後任者や将来その企業に入社してくる社員たちのために、伝えなければならない重要な問題がある場合には、人事部門との面接を設定したり、退職者を対象に行われる面接などの機会に匿名で報告しておきましょう。上司との面接では、退職と転職の意思を伝え、在職中の支援と次のステージに進むことが出来ることに対する感謝を述べるに留めておきましょう。

不安その4 上司が動揺したら?

あなたが大切なチームのメンバーであり、上司との関係も良好だったのであれば、上司も思わず本心が出てしまうのかもしれません。こうした状況であれば、あなた自身もこの職場を去るのが悲しいと素直に表現しても構いません。ただし、冷静に、自分のキャリアに大切なことを見失わないよう注意して下さい。時が経てば上司も気持ちの整理が出来るようになります。感情的になるのは、悪いニュースに接した時の自然な反応です。いずれ乗り越えていくことが出来るものなのです。

不安その5 カウンターオファーがあったら?

上司があなたを気に入っていて、会社の予算などに余裕があれば、昇進や昇給、あるいはその双方をカウンターオファー(逆提案) してくる可能性もあります。これにはどのように対応したらよいでしょうか?

その場ですぐに結論を出す必要はありません。十分な時間をかけて検討して下さい。報酬額だけで決定するのは禁物です。キャリアの目標と自分自身の成長を、長期的な視点で考えましょう。今の会社は、あなたの意欲を本当に満たしてくれますか?もしそうならば、あなたは何故未だにそれを達成出来ずにいるのですか?転職先は、今の会社では提供出来ないもの、つまり新しい業界経験や仕事を提供してくれますか。会社の規模は、希望通りですか?大切なのは、 居心地が良い場所から踏み出してさまざまな経験を積み、自分の力を培っていくことです。それを理解しているからこそ、あなたは転職に踏み切ったのです。

神経をすり減らす出来事が続くと、馴染んだ職場の方が、安全で魅力的に思えるかもしれません。しかし、新しい環境への不安に左右されて、カウンターオファーの内容を過大評価するのは避けたいところです。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」なのです。

不安6 職場に迷惑をかけていないか?

さて、退職が確定し、同僚たちにあなたの退職が通知されました。今の会社に友人や面倒見の良い上司がいる場合は、後ろめたい気持ちになるかもしれません。

しかし、本当に面倒見の良い上司であれば、あなたの成功を望むはずです。今回の件をきっかけに自分のマネジメントスキルを見直し、あなたの退職をネガティブに捉えることはないでしょう。上司もかつてはあなたと同じ立場で働いていたのです。今回のあなたと同じ経験を積みながら、現在のポジションに就いたのかもしれません。

仲の良い友人は、あなたの退職を悲しむでしょう。ただし、真の友人であればあなたの決断を支持してくれるはずです。退職後も連絡を取り合うことは出来ますし、キャリアを歩む中で仕事で再開することもあるかも知れません。今は、他人ではなく、自分のことを優先して考えましょう。

不安7 後戻り出来ないのでは?

上記のポイントを守り、プロとして行動すれば、後戻りが出来ないと言うことはまずありません。退職確定後も仕事に手を抜かず、転職の理由を聞かれても今の会社を悪く言うことは控えましょう。最終出勤日には、上司や同僚に心からの感謝を伝えて下さい。

また、退職しても、今の会社の仲間とは定期的に連絡を取り合いましょう。仲間やチームが成功した時は、メールやSNSで祝福のメッセージを送信するのもお勧めです。LinkedInを通じていいねをつけたり、彼らの最新情報をシェアしたりするなど、同僚として、また仕事でつながっている仲間として彼らの心に残るようなコミュニケーションをしていきましょう。

私が今回の記事を執筆したのは、皆さんが退職届の提出をためらう理由を明らかにするとともに、皆さんのキャリアを大きな視野で考えたとき、これらのことは取るに足りないものであることをお伝えしたかったからです。皆さんの前には、キャリアの目標が大きく広がっています。これらを達成するためには、戦略的な視点で、自分自身のことを優先して考えなければなりません。あなたの上司が優れた人物であれば、きっとこれを理解し、新たなステップに向けて皆さんをサポートしてくれるでしょう。退職届の提出をためらう必要は、どこにもないのです。

著者

スージー・ティムリン
英国政府投資会社(UKGI)、最高執行責任者(COO)
UKGIのミッションは、英国政府のコーポレートファイナンスおよびガバナンスの中核となり、興味深く複雑な商業的課題に対処することである。
COOとしての役割は、ビジネスの効率的な運用管理や最適な組織設計。そして、UKGIが人材を最適な方法で採用、育成、管理し、適切な報酬を与えられるようにすること。
UKGIの前は、ヘイズ・タレント・ソリューションズ(HTS)の人材・文化部門のグローバル・ディレクターを務めていた。